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ダミー材料の比較

ダミーに使われる材料はいろいろありますが、今回はよくつかわれている3種類の材料について、ダミーの作り方とそれぞれの特徴を紹介します。

<今回使用する材料>
1)PVC(商品名:ホットポア)
2)キャスト用シリコン(商品名:クリアシリコン)
3)液体ラテックス(商品名:マスクラテックス)


1)PVC(ホットポア)

PVCは Poly Vinyl Chloride (塩化ポリビニール)の略で、白い液体のビニール原料です。ビニールと言っても、普通にビニールと呼ばれているものとは違い、出来上がりはゼラチンと似た状態で、強度はゼラチンよりも高いものになります。

今回は浅草ギ研でも販売しているホットポアという名前のPVCを使用します。このPVCを二重なべで、340〜370°F、つまり約170〜190℃でかき回しながら熱すると白い液状の原料が透明のゲル状になってきます。着色をする場合はこの時点でコスメティック系の顔料かレジン用顔料で着色をしますが、「特殊メイク掲示板」でミノさんが書いているように油性染料で着色した方が色合いはよく出るようです。PVCが透明になったら着色をして 耐熱シリコン型 又は 耐熱石膏型 に流し込み冷やします。

<加熱>
加熱には二重なべを使いますが、二重なべはあまり販売されていないようなので天ぷらなべなどの大きななべにサラダオイルを満たし、上に小さいなべを置いてその中にPVCを入れて熱しても良いでしょう。溶かす温度は170℃〜なので大きななべの中には油を入れます。水では100℃以上にはなりませんので注意してください。また、なべが一つしかないからといって油の中に直接PVCを入れるのは非常に危険なのでやめてください。
PVCは食べると有害ですので、PVC加熱用に使ったなべなどは調理用には絶対に使用しないで下さい。また、加熱は換気の良いところで行ってください。台所など、食べ物があるところでの加熱はやめてください。
今回はサラダ油を使用していますが、200℃以上になると発火する可能性があるなど危険ですので、作業中はかならず消火器などを手元に置いて、作業場から離れないようにしましょう。

<顔料について>
PVCの着色は着色料の色とできあがりの色が異なる(暗くなる)ので慣れが必要です。また、メーカー曰く、耐熱顔料ならなんでも良いというわけではないそうです。おすすめはボブケリーのドライコスメティック顔料かボブケリーのレジン用顔料が良いようです。ボブケリーの顔料は近々浅草ギ研から販売する予定です。

<フェ-クスキン>
PVCは硬化後に暗い色になりますので、フェ-クスキンを作る場合には非常に少量のライトフレッシュ(明るい肌色)顔料をまぜます。

<モールド(型)>
型は耐熱性のものを使用します。シリコン、石膏がよく、金属型は急速に冷えて収縮する為、あらかじめ暖める必要があり、あまり向きません。

<離型材>
PVCをシリコンや石膏型に投入する時には離型材は不要です。

<再加熱>
PVCは他の材料とは違い、硬化後も二重なべに入れて再加熱すると溶けて再使用することができます。但し、再加熱には原料から作るときよりも長い時間加熱する必要があります。再加熱時には硬化したPVCをできるだけ小さく切ってからなべにいれると加熱時間が短縮できるでしょう。

<スラッシング>
皮膚状のものをつくる場合には、溶かしたPVCを型(マスクラテックスをつくるような分割した型)の中に入れて回します。PVCが型の内側に付くと冷えて固まり、皮膚状のものができます。但し、この作業は慣れが必要なので何回も練習する必要があります。

<充填>
PVCは非常にやわらかいので大きなフェ-クを作る場合には中に充填してささえるものが必要です。発泡ウレタンなどが向いています。

<保存>
保存はフタをきちんと締めて保存します。

それでは実際に手のダミーを作る様子を紹介します。
手のダミーを原型から作るのは面倒なので、今回は実際の人から手型を取って原型としました。このやり方はフォームラテックスを作るところで何回か紹介していますが、再度段取りを紹介します。



まず、原型となるものを石膏で作ります。石膏原型をつくるにはアルジネートで実際の手の型を取ります。手のアルジネートを盛って、ビニール袋をかぶせて硬化するまで待ち、取り外したのが上の写真です。アルジネートはバーラップで補強して型がくずれないようにします。(これはフォームラテックスの使用のところでくわしく紹介しています。)


SH11-5
実際に出来た石膏型です。色が黄色いですが、今回は他のコーナーで使っていた安価な石膏ではなく、歯科模型作成用の硬石膏を使いました。これはスタッフなどで補強しなくても普通の石膏よりも強度があるものです。

SH11-6
シリコンで2分割凹型を作るために半面を粘土でおおいます。分割ラインは手の側面が一番ふくらんだ部分にするとアンダーカットが少なくて済みますのでそのラインに沿って作ります。



左上:ブロックなどで囲いをつくります。
中上:型取用シリコンに硬化剤を混ぜて注ぎます。型取用シリコンは硬化時間が早い(6時間)EXシリコンを使いました。これは当ページでも販売しています。
右上:硬化後、ひっくり返して粘土を取り除きます。
左下:シリコン部分にはシリコン離型剤を塗ります。今回はバリヤーコートというものを使いました。
中下:反対側にブロックをつみ上げて囲いをつくります。
右下:反対側にシリコンを注ぎます。


硬化後に分割を外したのが上の写真です。
これでPVC用のシリコン型ができました。

ここからPVCの使用の様子です。

SH11-5
まず、用意するものですが、二重なべがなかったのでテンプラ用のなべで温度計がついているものを用意しました。スーパーで3千円程度でした。また、これに丁度よくはまる小さめのなべを用意しました。この小さいなべはテンプラなべの上に置くと丁度良い具合に中に浮きますのでこの間にサラダ油を入れます。
写真左上の白いボトルがPVCです。その他に軍手、マスクを用意します。


サラダ油を入れて170°近辺まで熱します。小さいなべを入れると温度が下がるので、PVCを入れる前に温度が安定するように火加減を調整します。ここでは作業場の窓を全開にしてカセットコンロで加熱しています。台所などでは作業しないようにしましょう。

SH11-8
温度が安定してきたらPVCを注ぎます。

SH11-9
加熱中は割り箸などでよくかき回しつづけます。このとき、かき回すのをサボるとダマができますので注意してください。

HS11-20
加熱を続けると色が透明になってきます。また粘度も強くなってきます。温度を高めにした方が粘度が低いようです。但し、200℃近くになると危険ですので温度は190℃近辺までに保ちます。

HS11-21
数分でほぼ透明になります。着色はこの状態で行います。

HS11-22
コスメティックピグメントが入手できたので、肌色に若干の黄色と白を混ぜて黄土色に近い肌色にしました。これをごくわずかPVCに入れます。

HS11-23
着色したのが上の写真です。かきまわしながら写真をとったので手ブレがおきてます...

HS11-24
PVCを型に流しこんで冷やします。この時、型を回してPVCを型にいきわたらせ、余計なPVCをなべに戻すと中が空洞の皮状のPVCができます。この空洞に発泡ウレタンなどを充填させればしっかりとしたダミーになります。今回は比較もかねてPVCだけで作りました。

HS11-25
30分ぐらい冷やしてから型を外します。

HS11-26
このように出来上がりました。

HS11-27
余分な部分はハサミなどでカットします。

HS11-28
完成です。投入時にすぐ固まるのを恐れていそいで投入した結果、気泡が入ってしまいました。練習が必要です。

HS11-29
このように大きいダミーだとPVCの場合、やわらかいのでグニャっとなってしまいます。逆に骨が無くなったような特殊効果にはこのまま使えるかと思います。触感はちょっとベタつきますが人間の肌のたるんだ部分のようなやわらかさです。
PVCは人体にはよくない物質もはいっていますので、くれぐれも皮膚に直接取り付けるような用途には使用しないで下さい。

HS11-30
なべで再加熱すればまた溶かして使えますので経済的な材料とも言えるでしょう。


2)キャスト用シリコン(クリアシリコン)

クリアシリコンについては他のページで説明していますが比較用に同じ型で作ってみます。但しキャスト用シリコンは高価なので本来はこのように大きなものを全てシリコンでつくるのには向いていません。通常はこのような2分割型ではなく、片面だけの型にシリコンを塗布してFRPや発泡ウレタンで補強します。


SH11-31
まず型ですが、PVCのところであまり説明しませんでしたが、投入用の穴は2つつくります。これは投入用に大きい穴と、空気が抜ける小さい穴が必要です。

SH11-32
シリコン型にシリコンをキャストしますのでシリコン離型剤を塗ります。

SH11-33
シリコンは硬化剤を混ぜると硬化します。分量ははかりで正確に測ります。

SH11-34
顔料を入れないとこのような半透明の乳白色です。

SH11-35
PVCと同じ顔料を使ってみます。

SH11-36
クリアシリコンはもともと白が混じっているので、PVCでやったときよりも白っぽくなりました。

SH11-37
ディテールに泡が入らないようにあらかじめ細部にシリコンを塗布しておきます。手のひらの半分側だけでよい場合はこのまま硬化させ、発泡ウレタンやFRPで補強します。
今回は手の2分割型ですがシリコンは本来このようなキャストには(高価なので)向きません。但し、出来上がりは他の材料よりも皮膚っぽくすることができますのでシビアな映画撮影やアップを撮るときによく使われます。例えば、顔のダミーを作る場合には後頭部は髪の毛で隠せますので顔面だけでよく、顔面状の皮膚をシリコンで形成できれば良いわけです。この場合は顔面半分の型の内側にシリコンを塗布して硬化させれば高価なシリコンを大量に使うことなく、良いダミーが作れます。

SH11-38
一旦、型をしめます。この時、型どうしを板ではさみ、ゴムなどで固定して型を固定しますが、今回はテスト用なので透明のガムテープで周りを止めただけにしました。(この方法は型がくずれますのでお勧めできません。必ず板を使うようにしましょう。

SH11-39
今回は比較用なので中をシリコンで充填します。


SH11-40
硬化後は型からはずします。余分な部分はハサミで切り取ります。余分な部分は薄いので燃やして取り去るプロもいますが、有毒ガスが出るのでカットして取り除くようにしましょう。燃やすと有毒ガスが出るので当然、燃えないゴミに出します。これはPVCその他も同じです。

SH11-41
石膏原型との比較です。触感は人間の筋肉の部分とほぼ同じ硬さで、触った感じも皮膚ににています。

SH11-42
左がシリコン、右がPVCです。PVCとくらべると硬さがわかります。

3)液体ラテックス(マスクラテックス)

PVCは何度も使える上に安価なので予算を抑えたいときにつかわれますが、マスクラテックスでも安価なダミーを作ることができます。 マスクラテックスは本来、マスクを作るものですが、このような手のマスクをつくればダミーとして使えるというものです。

マスクラテックスの型は石膏型が必要ですのでまずは石膏型を用意します。石膏型は本来、アンダーカットが無いような造形をする必要がありますので人間の手からとった石膏原型(黄色い石膏)をそのまま石膏で型取ることは難しく、3〜4分割の型になります。マスクラテックスは粘土で原型をつくり、それを石膏で型とって粘土を取り除くという方法が一般的なので原型を粘土で作る必要があります。

このように通常は「型」か「キャスト材又は原型」のどちらかがやわらかくなければ型から抜くことはできません。(シリコン型にシリコンキャストはどちらもやわらかいので一番型から抜きやすい組み合わせと言えるでしょう。)

但し、今回はシリコンですでにダミーが出来ていますのでこれを原型とします。

SH11-43
シリコン型を作ったときと同様に半面を粘土で覆います。

SH11-44
ブロックで囲います。

SH11-45
シリコン型と違うのはシリコンではなく、石膏を投入するという点です。写真で使っている石膏は1kg400円の安価な焼石膏というものです。この石膏は20分ぐらいで一次硬化します。出来れば超硬耐熱石膏とがが使用できればその方が良いです。

SH11-46
半面の型が硬化したら逆の面を型取ります。写真のように、石膏どうしが接する面積をねんどなどで覆って少なくすると石膏型どうしが外れやすくなります。但し、あまりやりすぎると型がもろくなったり、かみ合わなくなったりしますので注意しましょう。

SH11-47
石膏同士が接する部分には離型剤を塗り、よく乾燥させます。写真では離型剤に「かり石鹸」を使っています。これは画材屋などで入手できます。

SH11-48
逆面にブロックなどで囲いをつくり、石膏を流し込みます。

SH11-49
石膏を流し終えたところ。

SH11-50
石膏が硬化したら取り外します。原型がシリコンなので問題なく外れます。

SH11-51
石膏型の完成です。

SH11-52
石膏型をかみ合わせると写真のように手の形の空洞が出来ているのがわかるでしょう。

SH11-53
型同士を固定してマスクラテックスを流し込みます。石膏型は完全にかわかなくて湿っている状態でもかまいません。満タンに満たしたらそのまま、ラテックスと石膏の接触部分が固まるまで20分ほど待ちます。

SH11-54
その後、あまったラテックスを出します。型はラテックスが乾くまで数分おいてはひっくり返し、というのを繰り返した方が良いでしょう。片面だけのまま放置すると片面が厚く、逆が薄く(あるいは穴があいたり)なります。30分ぐらいはこまめにひっくり返した方が良いでしょう。

SH11-55
2日放置したのが上の写真です。晴れた日なら1日でも良いでしょう。マスクラテックスは乾燥すると色が茶色系の色になりますのでそのままでも良いのですが、他の材料とは違い、マスクラテックスは塗装しやすいので最後にエアブラシなどを使って塗装するとより本物っぽくなります。

SH11-56
型から外すときにはベビーパウダーなどをふりながら外していきます。そうしないとゴム同士がくっついてしまうことがあります。

SH11-57
外す途中です。筆などを使ってパウダーをふると良いでしょう。

SH11-58
中が空洞になっています。

SH11-59


SH11-60
外した後は中にもパウダーをふっておきます。

SH11-61
余分な部分はハサミなどでカットします。

SH11-62
これで完成です。
マスクラテックスの場合はPVCとは違い、溶かして再使用ということはできませんが、一回で使用する分量が少ないので安価に作成できる材料と言えるでしょう。但し、力を加えるような用途は当然のことながらフニャフニャしてしまうので無理です。


4)各材料の比較

この他にダミーに使われる材料としてはゼラチンやWAXがありますが、とりあえずこの3種類の比較をしてみます。

SH11-63
並べてみたのが上の写真です。上からPVC、マスクラテックス、シリコンの順です。まず硬さを見てみます。

SH11-64
PVCはやわらかく、グニャっとした感じで少しべたつく触感です。

SH11-65
マスクラテックスは中空なので押すと当然へこみます。

SH11-66
シリコンは弾力があり、人間の触感に一番近いといえます。手首の色はグリースペイントでちょっと着色してみたものです。

SH11-67
左からシリコン、マスクラテックス、PVCです。色あいはシリコンとPVCは同じ顔料を使っていますがPVCの方が暗い発色になります。真中のラテックスは着色していませんがゴム用塗料(アクリル塗料でもなんとか可)で塗装できます。シリコン、PVCへの塗装は難しく、グリースペイントで陰影をつける程度しかできません。

SH11-68
PVCをにぎった写真です。力強くにぎると形がくずれます。

SH11-69
ラテックスをにぎったところです。軽くしかにぎれません。

SH11-70
シリコンはしっかりにぎっても大丈夫です。

SH11-71
PVCのアップ

SH11-72
マスクラテックスのアップ

SH11-73
シリコンのアップ

マスクラテックスとシリコンはマニュキュアでツメを塗ったり、ヘアーパンチングツールで植毛をしてさらにディテールを出すことができます。


5)マスクラテックス+発泡ウレタン

マスクラテックスのダミーはそれだけではしっかりしないので発泡ウレタンと併用するという方法もあります。



マスクラテックスは中空なのでその中に発泡ウレタンを注入します。


発泡ウレタン硬化後は指で押しても問題ありません。また、表面がゴムであることと、発泡ウレタンが固いスポンジ状なので触感も表面はやわらかい感じがします。


前から見たところ。


発泡ウレタンはカッターなどで簡単に切れるので、写真のようにナイフを刺すといったアプリケーションにも使用できます。昔のドリフでカトちゃんがクシャミをするたびに患者へ注射器を直角に刺してしまうというコントがありましたがそのような場面も作れるでしょう。

このページで使われている
・PVC
・マスクラテックス
・キャスト用シリコン
・型取り用シリコン
は本サイトで販売しています。

2003年8月14日


その後、作ったダミーでGIFアニメを作ってみました。主人公のマユはWAXでつぶしてグリースペイントを塗っています。
下の画像をクリックすると始まります。

(1MB)

2003年8月16日


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