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大きな造形の型取り(型取り用シリコン+ポリジャケット)

だいぶご無沙汰している特殊メイク教室ですが、最近、造形の必要性が無い&新しい素材を仕入れてないのでネタがありませんでした。せめて年間2回は新ネタを出そうと思う今日この頃です。

さて、話はかわりますが、「茶の間でごはんを食べながら”遊星からの物体X”を見ていたら、急にスパイダーヘッドを動かしたくなった。」という方も多いと思います。

そんな時、1/1原型はあったとして、それを動かすにはFRPやマスクラテックスなどを使って外装を作る必要があります。これには原型を型取って雌型を作る必要がありますが、大きなものの型取りは非常に難しいものです。

今回は運よくACRのSさんが軟禁されてましたのでテクニックを披露してもらいました。ACRは造形物ならなんでも作ってしまえる造形家集団です。ホームページは近日公開予定との事。今回は特別に協力して頂きましたが本来はギャラを払わなくてはならないような内容です。ACRへのお仕事の依頼はウチの掲示板に書き込んでもらえればよいかとおもいます。
(Sさん、災難でしたなー。)


SH17-1
スパイダーヘッド出現。カニ足は別パーツであります。
素人的に見て、「こんなのの型取りは結構分割しないとできないのでは」と考えてましたがACRさんが言うには「2分割でおっけー」との事。

枠の作成

SH17-2
型枠ブロックを使って、分割線よりちょっと低めの囲いを作っていきます。写真ではその上に粘土を敷いてます。


↓ACRのSさん。
SH17-3
分割のラインは「ほいくねんど」を使っているそうです。シリコンとの離れが良く、扱いやすいので型取にはコレが一番いいそうです。しかも安い。写真では白いねんどです。
これを丸棒などでたいらな板状にして、 分割線沿いになるべく原型と垂直になるように付けていきます。原型との境目はヘラなどを使って原型との間にすき間が出来ないように注意します。
出来上がったら原型に沿って溝を掘っておきます。(次の写真参照)


SH17-4
同じように板状にしたねんどで写真のように囲いを作っていきます。
小さいものの型取りでは、囲いの高さを原型よりも高くしてシリコン流し込めばOKですが、1/1ヘッド(しかもへんな突起付き)ぐらいの大きさになるとこの方法ではシリコンがいくらあっても足りません。それで、シリコンを表面に塗るようにして型をとるとの事で、囲いはそんなに高くなくても良いことになります。


SH17-5
囲いが完成したところです。やっぱ、プロは仕事早いっす。


シリコン型取り

SH17-6
シリコンは今回、造形村のEXシリコン(ウチで売ってます)を使用します。EXシリコンは安いのが特徴で、このように大きなものの型取りには強度が足りないと思われますがテクでカバーできます。


SH17-7
始めは写真の量ぐらいのシリコンを作って筆などで細ーく振りながら垂らしていきます。シワのラインに沿って行うとシリコンがきちんと入り、気泡もはいりづらくなるそうです。今回のような原型は問題ありませんが、小さくてディテールが細かい造形の場合はこの作業をきちんとやらないと気泡が入ったり、アンダーカット部分にシリコンがいってなかったりするようです。


SH17-8
だいぶ覆われてきました。


SH17-11
1層目が終了したところです。このままにしておくと写真のように垂れてきて凸部分が薄くなりますので、筆で下に垂れたシリコンをすくって薄い部分にSH17−7のように付けていきます。EXシリコンは硬化剤を普通に調合すると30〜40分ぐらいから硬化が始まりますのでこの間、この作業をつづけます。
結構しんどいです。この辺がプロとアマの差でしょうか?
S氏曰く「ええ顔や〜」

固まり始めたらしばらく放置しておきます。今回は1時間ぐらいでしょうか。

SH17-10
次にガーゼを5cm角ぐらいで切っておきます。


SH17-12
SH17−6のようにシリコンを作り、今度はガーゼを貼りこみながらシリコンをつけていきます。写真ではガーゼが見づらいですね。


SH17-13
ガーゼは原型周りの平らな部分にも貼りこんでいきます。


SH17-15
2層目完了。これもしばらく放置します。


SH17-9
3層目に行く前に、不要なシリコン塊などでキーを作ります。写真ではカッターで指先大の大きさのキーを作ってます。


SH17-16
キーをつけて、上からシリコンを付けていきます。これでキーは1,2層目のシリコン層に接着されます。
硬化したら3層目が終了です。キーは額にも1個ついてます。

ここで、時間切れとなり次の作業は次回持ち越しということでACRさんは釈放されました。
次はこの上にポリ樹脂でジャケットを作ります。

次は自分でやらんとねー。ねえ、姐さん。

2004年4月9日

アンダーカットの処理


スパイダーヘッドの呪いにより、私を含む前回作業した全員がナゾの病気にかかり一時作業を中断してました。
次はアンダーカットの対策です。

前回のまま、FRPでジャケットを作るとアンダーカット部分が抜けなくなりますのでアンダーカット部分にポリ樹脂(FRPのガラスクロス抜き)を埋め込みます。この時、ポリ樹脂だけだと垂れてしまいますが、タルクという粉をまぜて粘度を高めて作業します。タルクは片栗粉でも代用できるそうです。タルクを使うのは私も今回始めて。

SH17-17
右の紙コップがポリ樹脂に硬化剤を混ぜたもので、左の白い粉がタルクです。始めて使うのですこしづつ入れながら様子をみました。ポリは100g作っています。(硬化剤は3g)


SH17-18
紙コップ1個分ぐらいのタルクを入れてもまだ薄いようです。


SH17-19
その後、どんどんタルクを追加してかきまぜたら写真のようにどろどろの状態になりました。


SH17-20
これをアンダーカット部分に盛ります。このスパイダーヘッドの場合は口、左まゆ、両頬、こめかみ部分、アゴの下がアンダーカットになっています。


SH17-21
大体、盛り終わったところです。この上からFRPのジャケットをかぶせるように作成するわけです。FRPジャケットが外れるようにポリを盛ります。
ここで姐さんがしているのは防毒マスクです。ポリはかなりシンナー臭いので防毒じゃないと耐えられません。ACRさんが言うにはモノマーという有害物質が入っているものが多いので、防毒マスクをしないと生殖機能が失われることがあるぐらいの毒らしいですので注意して下さい。窓は全開です。


SH17-22


SH17-22-2
このようにすると、FRPジャケットがアンダーカットに入って抜けなくなるということはなくなります。
ちなみに、「ポリやFRPで作ったジャケットは不要では?」と考える方もいるかと思いますが、シリコンだけだとふにゃふにゃしてしまうので、原型を再現できません。よってかたい殻が必要となるわけです。


SH17-23
1時間ぐらいすると硬化しはじめます。この状態では、カッターなどで切ることができますので、表面に溝は出っ張りがある場合には調整します。


SH17-24
口の部分は上下にアンダーカットがありますので、写真のように上下に斜めにポリを盛ります。

この後、ポリが硬化するまで待ちます。

2004年4月12日


おっと、ポリにキーをつけるのを忘れてしまいました。ポリの上からFRPジャケットをかぶせますが、ジャケットとアンダーカットに埋めたポリ部がズレないようにキーをつけなくてはなりませんでしたがわすれてしまいました。

一日経過してポリは固まってしまいましたので、ドリルで浅く穴をあけて、その穴の上にエポキシパテでキーをつけました。

SH17-25
写真の黄色い部分がエポパテです。このキーは上方向にジャケットが抜けるように付けます。

2004年4月13日


FRPジャケットの作成

ジャケットは石膏で作るもんだと思ってましたが、言われてみるとFRPで作った方が軽くて薄く作れるので便利です。ちょっと考えれば出来そうですが、造形はやはり想像力が大事と思いました。
ということで私もやったことないのですがFRPでジャケットを作ってみます。

SH17-25-2
前回つけたキーですが、上の写真の黒線のように上下につけるのが正解との事でした。その方がジャケットが抜けやすいとの事。とりあえず、ジャケットは抜けるようになってますのでこのままで。
写真ではポリのまわりに粘土がついてますが、これはポリ硬化後にちょっとすき間が開いてしまった為。ACR師匠が言うには硬化剤入れすぎるとそうゆうことになるそうです。確かに硬化剤は多めに入れてました。ジャケットのポリがすき間に入ってしまわないように応急処置としてねんどですき間を埋めたわけです。


SH17-26
タルクを混ぜたゲルポリが硬化したので、ポリ部だけにPVA(FRP離型剤)を塗ります。


SH17-27
作業を早めるためにドライヤーで乾かします。PVAは乾燥すると膜状になります。


SH17-28
FRPは Fiber Reinforced Plastic の略で、直訳すると「繊維で強化されたプラスチック」となります。繊維は通常、ガラス繊維を使用しますが、レーシングカーなど高い強度が必要な場合はカーボンファイバーなどを使います(がめちゃ高価)。
今回は上の写真のようにガラスマットを使います。


SH17-29
ポリに硬化剤を混ぜて、ガラスマットをちぎって貼り付けていきます。筆でつつくようにして気泡が入らないように貼っていきます。出来れば何層かに積層していくと強度が出ます。


SH17-30
平均3層ほどに積層したところです。
姐さん曰く「風雲たけし城のストロング金剛みたいだ」との事。歳バレまっせ。

2004年4月15日



FRPジャケットが硬化して、顔面部の型取りは終了しました。次は後頭部です。

SH17-32
囲いのねんどを取り去って横からみるとこのようになります。上から粘土→シリコン→FRPという層が出来ているのがわかります。


SH17-31
これは粘土を全部とりさったところ。



SH17-33
所々に粘土かすが詰まっていますのでヘラなどで取り去っておきます。


SH17-34
始めに作っておいたキーが原型の周りにそって凸状になっています。これはシリコン同士のキーになります。

この後、再び囲いを作ってシリコン部分にシリコンバリアコートを塗っておきます。これはシリコン同士の離型剤です。

バリアコートが乾いたらSH17-7の要領で再びシリコンを塗ります。(写真とり忘れ)


SH17-35
同じく、2層目はガーゼを貼りながらシリコンを塗ります。


SH17-36
そしてキーを付けて、


SH17-37
3層目をつけます。

2004年4月16日



SH17-38
顔面部分と同じようにFRPを貼り付けます。後頭部はシリコンを厚めに塗って、アンダーカットをつぶしたのでゲルポリ(タルク入れたヤツ)でのアンダーカット処理はなしでした。
また、しばらく乾燥させます。

2004年4月20日



ということで、型が出来上がりましたのでいよいよはがして見ます。

SH17-39
まず、まわりの粘土を取り除いて、カッターなどでFRPのバリを切り取ります。


SH17-40
後頭部のFRPジャケットを剥がしているところです。


SH17-41
外れました。このように、アンダーカットがなければシリコン型とFRPジャケットは比較的簡単に外すことができます。


SH17-42
次に顔面のFRPジャケットを外します。この時、FRPジャケットとゲルポリ部分(写真の青いところ)がくっついてしまうとなかなか外れないのですが、お湯などにつけておくとゲルポリに塗った離型剤のPVAが溶けるので簡単に外せるようになるらしいです。


SH17-43
後頭部のシリコン型を外しました。


SH17-44
こんなかんじでFRPジャケットをシリコン型がセットになります。


SH17-45
ジャケットを取るときに強引に剥がしてしまうとシリコン型がいたみますので注意して下さい。指を指しているところがすこし破けてしまいました。シリコンを塗布するときに布をちきんと貼り付けていないとやぶけ易くなります。


SH17-46
顔面のシリコン型も取りました。


SH17-47
型が出来ました。


SH17-48
シリコン型をFRPジャケットに合わせて、


SH17-49
2つをあわせると、原型と同じ空洞が生まれます。これを使っていろいろな仕掛けを作る予定ですが、今回は型取りまでということで、ここまでとします。
機会があれば、別コーナーでラテックスなどで抜く→メカを仕込むという感じで紹介したいと思います。

2004年4月26日

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