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ハロウィーンマスクの作成方法(マスクラテックスの使い方)

おもちゃ屋などでよくガイコツなどのゴムマスクが売られています。これらは液体ラテックスゴムを石膏型に塗布して作るものでハロウィーンマスクなどとも呼ばれています。
特殊メイクの世界ではマスクを作る以外にも布やティッシュペーパーなどと組み合わせて特殊メイクやダミーを作るのにも使われています。

特殊メイク用の液体ラテックスゴムは大きく2種類があり、アンモニアが入っている液状のマスク作成用のものと、アンモニアが入っていないクリーム状のものがあります。アンモニアが入っていないものは直接皮膚に塗布するなどの用途に使われ、クリーム状なので硬化時間も比較的短いのが特徴です。アンモニア入りの方は液状なので石膏型などに流し込むということができます。

今回使用するのはマスクラテックスと呼ばれている液体ラテックスゴムで、石膏型のディテールを忠実に再現でき、プロも使用しているものです。それでは実際にこのマスクラテックスを使ったゴムマスクの作り方を紹介します。


原型の作成

ハロウィーンマスクは通常は人間がかぶれる大きさにするために土台となるものは人の顔大の大きさのものを使います。プロの場合はアーマチュアと言う石膏製の人型土台を使い、実際に対象となる人から石膏で顔の複製を取ったりする場合もあります。これには人の顔の前面だけではなく後頭部も型取るため非常に高度なテクニックが必要です。
簡単に土台をつくるには、木などで顔大の骨組みをつくり、麻ロープをまきつけると良いでしょう。これは学校の美術室にこのような土台があるのを見たことがある方がいるかもしれませんが、美術の塑像(そぞう)などでよくつかわれます。
今回は時間と材料費の関係もあり、ミニチュアのマスクを作ります。実際に顔大のマスクを作る場合もこれと同じ手順になります。土台となるものは今回は発泡スチロールを切断・接着して下の写真のようなものをつくりました。これにねんどを盛り付けていきます。

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丸いものは回転作業台というものです。ねんど造形時には頻繁に原型の向きをかえるのでこのような台があった方が作業が楽になります。回転作業台は画材屋で鉄製のものが1〜2万円で売られていますが、よく探せば安いものもあります。写真のものは東京の御徒町の画材屋で2千円で買いました。プラスチック製です。買うときには店員に「すぐ壊れるので鉄製が良いですよ。」といわれましたが2年間使用していても問題ありません。フィギュアなどを売っている模型屋に置いてある場合もあります。

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今回は「シロウトにも出来るか?」という実験も兼ねて、原型をコズさんにつくってもらいました。ねんどをさわるのは小学校依頼との事。映画雑誌を見ながらスターウォーズのヨーダを作ります。
ねんどは基本的には油粘土を使いますが、私はサルファーというねんどが非常に合っているのでサルファーのハードタイプを使っています。
この原型は石膏で型取るので、水性系の粘土は使わないようにしましょう。くっつくおそれがあります。また、土系の粘土も向いていません。


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目の部分は空洞になっていますが、これは後でくりぬいてアクリル義眼を入れる予定です。顔大のマスクを作る場合にはこの部分に目玉大のビー玉を入れると簡単に球面が出来ます。
今回作成する小さいマスクは後でアニマトロニクス用に使用する予定。


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耳は楊枝などで差込み、つなぎ目をヘラなどで消します。



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耳の部分は薄いので、石膏型を取ったときにマスクラテックスが入りずらいことが予想されるので耳の付け根を太くする、つまりラテックスの入り口を大きくするなどの工夫が必要です。



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大体の形が決まってきたら詳細をヘラで作っていきます。ヘラは各自使いやすいものが違いますので初心者の方は画材屋などで一般的に売られているものを使いながら自分にあったものを探していくのがよいでしょう。写真のヘラはプラモデル用のステンレス製のヘラです。


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口の周りやひたいなどの大きなシワはヘラで彫り込んでいきます。


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ヘラで作れる詳細部分が出来上がったら、指などで表面をならしておきます。指が入らないような部分は綿棒を使うとよいでしょう。 最近は模型屋などで造形用の非常に小さい綿棒が売られています。

<テクスチャースタンプの作成>

ヨーダのように顔中シワがあるものはシワを全部書き込んでいくと非常に大変ですし、初心者の場合は出来上がりもきれいにはできないでしょう。このようなときには実際のシワを型取って使うという手もあります。このような立体のもようをつけるものをテクスチャースタンプといいます。テクスチャースタンプは市販もされていますが非常に高価なのでアルジネートなどで身近なものを型取った方が良いでしょう。

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指のぶぶんにシワを寄せると、丁度ヨーダっぽいシワになったので指からシワをとることにしました。この対象物はその原型に合ったものを身近なものから探します。今回はシワですが、例えばウロコ型を実際の魚から取ったり、怪獣の皮膚をミカンから取ったりすることもあります。
上の写真では手のシワにアルジネートを盛ったところです。15分間この状態にして、硬化したら外します。


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硬化したアルジネートです。アルジネートはこのままだと乾燥して収縮していきますので外したらすぐにポジ型を取ります。


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石膏を盛ってポジを作ります。


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石膏ポジの完成です。良い具合にシワが取れています。


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ここに、シリコン又はマスクラテックスを塗ってスタンプをつくります。今回はマスクラテックスを使うのでマスクラテックスでスタンプを作りました。


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表面をならしたところへテクスチャースタンプをおしていきます。


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いろいろなシワの中から、ヨーダの各部分に合ったシワをおしていきます。ヘラで全部作っていたのでは何日かかるか分かりません。


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これで原型の完成です。原型を始めて作ったにしてはなかなか良い出来ではないでしょうか?


ネガ型(石膏凹型)の作成

ねんど原型が完成したら石膏で型を取ります。型は原型の形にもよりますが今回のような原型の場合は2分割型でよいかと思います。分割型を作るには分割用のカベを作る必要があります。これには紙ねんどのような水性粘土を使います。

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ます、紙粘土を棒などで平らにし、ヘラなどでカベの形にカットします。

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紙粘土で作った壁を原型の接点になるべく垂直になるように配置します。この分割ラインは通常は顔の側面の一番でっぱっているところを選びます。但し、特に理由がある場合や、分割数を多くしたい場合はこの限りではありません。
分割ラインはできるだけ正面から見て見えない位置にします。顔の真中などに分割ラインを作るとラテックスを抜いたときにその部分に線が出来てしまうことがあります。


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ヘラなどを使って接点を平らにならします。どうしてもすき間があいてしまう場合は少量の紙粘土を水で溶かして筆などで塗りつけるとすき間が埋まるでしょう。この時、すき間があるとその部分に線が出来てしまいます。


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分割カベの完成です。


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紙粘土の部分に石膏離型剤を塗ります。今回は「かり石鹸」を使用しました。ワセリンなどでも良いようです。塗ったらよく乾燥させます。


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石膏離型剤が乾燥したら少量の石膏を作ります。紙コップなどを使うと、残った石膏などを捨てやすいので良いでしょう。


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原型の詳細をきれいに出すのと、気泡がはいらないようにする為に、始めは筆で石膏を塗っていきます。筆は習字用の筆が良いです。


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少量づつの石膏を何層かにわけて塗っていき、だんだん厚くしていきます。


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全面が覆われたら指やヘラなどで表面をならします。石膏は硬化直前にクリーム状になりますのでこの時に作業をするとやりやすいです。


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表面をならした石膏にバーラップで補強をします。バーラップは包帯に石膏をまぶしてあるもので石膏の補強に使われます。骨折したときに巻かれる石膏もこれです。バーラップの使用は必須ではありませんが、石膏、特に安いものは強度が無いので乾燥後に衝撃をあたえると割れたりします。原型作成の手間を考えると是非補強した方がよいかと思います。バーラップは浅草ギ研のショップでも販売しています。石膏は1kg400円の一般的な安い石膏を使っていますが、プロなどはもっと硬化な硬石膏や超硬石膏を使っている人もいます。ハリウッドなどではUltraCal30という産業用の硬石膏がよく使われているようですが、なにぶん重いので輸入して販売しているところは国内では少ない(無い?)です。


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今回使用している吉野石膏の焼石膏は硬化時間が25分のものです。この石膏は水とまぜて数分後から硬化が始まり、15分ぐらいから(温度湿度による)クリーム状になります。25分で硬化しますが、この時発熱しますので注意してください。先日、TVで体の型を石膏で取ろうとして発熱で厚くなりレスキューを呼んだという番組をやっていましたが、石膏の量が多くなるにしたがって発熱量は増えるようです。今回は1時間ぐらいで発熱がおさまったので分割カベを取り外しました。
逆に、前出の指のポジをとった時は少量だったので発熱はまったくありませんでした。


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前面の石膏型の完成です。次に後面を取ります。これで2分割の型になります。


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石膏同士はくっつきやすいのでなるべく石膏同士の接触面を減らすように粘土などで囲いを作ります。あまり接触面を減らすと、その部分の強度が落ちたり、石膏型同士を合わせたときに合わなくなるので注意します。この大きさの場合は1cm幅ぐらいが丁度良いでしょう。大きな型の場合はさらに接触面を増やすか、型同士がかみ合うようにしるし(ナイフなどで凹みを作るなど)をつけます。

写真をとり忘れましたが、この後、石膏が出ている面に石膏離型剤を塗ってよくかわかします。私は石膏離型剤にかり石鹸(画材屋で購入可)を使いますが、ワセリンでも良いです。離型剤はよくかわかさないと、石膏同士の接触面がもろくなったり、くっついたりしますので注意してください。(石膏自体はよく乾燥していないくても大丈夫です。)



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少量の石膏を筆で塗ったあとに石膏を盛り付け、バーラップで補強します。

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これで後面の完成です。


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石膏が硬化したら割り箸などでクサビをつくり、ハンマーなどで軽くたたきます。このとき、クサビのところに髪の毛ほどのすき間が開いたら、クサビを違う場所に入れてハンマーをたたきます。このようにして全ての接点にすき間があいたら手で外していきます。この作業は慎重にやらないと石膏型が割れることがありますので注意してください。どうしてもあかないようなら、石膏が完全に乾燥するまで待ちます(環境にもよりますが数日かかるとこもあります。)。石膏は完全に乾燥すると、硬化直後よりも強度が若干増しますのでこの後にさらに強い力でクサビを打っていきます。


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今回は石膏同士の接触面を少なくしたので簡単に外れました。


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これで石膏ネガ型の完成です。


キャスト

次はいよいよ液体ラテックスを使ってマスクを作ります。液体ラテックスは中のアンモニア分が飛ぶと硬化していきます。石膏で作った型は石膏に非常に小さい穴があり、この石膏にマスクラテックスを塗るとアンモニア分が吸収されて硬化が始まります。基本的には分割した石膏型を合わせて、この中の空洞にマスクラテックスを入れると石膏と接した面が硬くなるという感じになります。


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石膏型にマスクラテックスをキャストする前に、詳細部分に気泡が入らないようにあらかじめ筆などでマスクラテックスを塗っておきます。筆はあらかじめ食器洗い用洗剤(海面活性剤が入っているもの)をつけて絞っておくと、後でマスクラテックスが落ちやすくなります。


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目のまわり、口、鼻などの凹んでいる部分には気泡が入りやすいので注意します。

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石膏型同士を合わせてゴムなどで固定します。


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ここにマスクラテックスを流し込みます。このような小さい型の場合はボトル一本で足りますが大きな型の場合はもっと必要でしょう。マスクを均一な厚さにするにはこのように型にまんたんに流し込むのが良いのですが、どうしてもマスクラテックスを沢山買えない場合には、マスクラテックスを投入した後に型をぐるぐるまわして全体に行き渡らせるという方法もあります。但し、これは均一にやらないとゴムの薄いところができてしまうので慣れが必要です。


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まんたんに注いだらこのまましばらく待ちます。この待ち時間でマスクの厚さが決まります。通常は5〜20分ぐらいになります。20分ぐらいだと、市販のハロウィーンマスクと同等の厚さになります。ダミーなどで、この中に発泡ウレタンなどを注入する場合には薄くてもよいでしょう。(つまり待ち時間が短くても良いということ)


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時間が経ったら残ったマスクラテックスを戻します。これは次回もつかえるのでボトルに入れて密封し、冷所に保管します。

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マスクラテックスは硬化するとアイボリーからうすい茶色に変色します。


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環境とマスクの厚さにもよりますが、1〜数日で硬化します。今回は雨が多く、湿度が高かったので硬化までに4日かかりました。ドライヤーや食器乾燥機を使うともっと短縮できますが、均一に乾燥させないといけないので慣れが必要です。初めてやる場合には硬化するまで待つことをお勧めします。夏の晴れている日などは一日で乾燥・硬化する時もあります。

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硬化後はゴム同士がくっつかないようにベビーパウダーをふりながら外します。

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硬化していれば簡単に外すことができます。


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マスクの完成です。


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中はこのように空洞になっています。人間大の大きさのマスクで、実際にかぶりたい場合は後頭部を縦に切りかぶれるようにします。
今回はアニマトロニクス用なので首もついていますが、マスクだけつくる場合は首は不要でしょう。


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シワなどの詳細もきっちり出ています。

この後、塗装などをして完成です。


2003年8月22日


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